大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和62年(特わ)448号 判決

本店所在地

東京都中央区築地七丁目七番二号 大昌ビル

東海貿易株式会社

(右代表者代表取締役 佐々木聰)

本籍

同都港区赤坂八丁目六番

住居

同都同区赤坂八丁目六番二七-四一〇号

会社役員

佐々木聰

昭和一七年一二月一八日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺尾淳出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

一  被告人東海貿易株式会社を罰金一二〇〇万円に、被告人佐々木聰を懲役八月にそれぞれ処する。

二  被告人佐々木聰に対し、この裁判の確定した日から二年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人東海貿易株式会社(昭和五九年五月一日変更前の商号は株式会社ノースコーストシーフーズ。以下、「被告人会社」という。)は東京都中央区築地七丁目七番二号大昌ビルに本店を置き、農水畜産物の販売並びに輸出入等を目的とする資本金四〇〇〇万円(昭和五九年六月一日変更前の資本金は二五〇〇万円)の株式会社であり、被告人佐々木は被告人会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人佐々木は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、昭和五八年五月一日から同五九年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億六〇三一万九一六〇円あった(別紙1の修正損益計算書参照)のにかかわらず、売上の一部を除外したり、架空給料手当を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、同五九年六月二八日、東京都中央区新富二丁目六番一号所在の所轄京橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五四二五万二四〇六円でこれに対する法人税額が二一三〇万六八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六二年押第五〇九号の1)を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額六七二二万四〇〇〇円と右申告税額との差額四五九一万七二〇〇円(別紙2の逋脱額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人佐々木の当公判廷における供述

一  被告人佐々木の検察官に対する各供述調書

一  川高公憲、杉山宗雄の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  売上除外調査書

2  売上(ユアサ勘定)調査書

3  仕入(ユアサ勘定)調査書

4  役員報酬調査書

5  給料手当調査書

6  事業費調査書

7  旅費交通費調査書

8  交際費調査書

9  支払手数料調査書

10  支払手数料(ユアサ勘定)調査書

11  受取利息調査書

12  受取利息(外貨預金)調査書

13  雑収入調査書

14  雑収入(ユアサ勘定)調査書

15  損金不算入役員賞与調査書

16  交際費損金不算入調査書

17  事業税認定損調査書

18  為替差損調査書

一  収税官吏作成の領置てん末書

一  登記官作成の商業登記簿謄本

一  押収してある昭和五九年四月期法人税確定申告書一袋(昭和六二年押第五〇九号の1)

(法令の適用)

被告人佐々木の判示所為は法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で処断し、また、同被告人の判示所為は被告人会社の業務に関してなされたものであるから、被告人会社に対しては同法一六四条一項により判示の罪につき同法一五九条一項の罰金刑を科することとし、情状により同条二項所定の金額の範囲内で処断すべきところ、本件の脱税額は判示のとおり四五九一万円余りに達し、一事業年度としては高額であり、その犯行の動機をみても格別同情すべき点はないなど、被告人佐々木及び被告人会社の刑責はいずれも軽視することはできないが、他方、被告人会社は本件発覚後修正申告を行ない既に本税、重加算税等を全て納付していること、被告人佐々木はこれまで交通事犯による罰金刑を一回受けた以外には前科はなく、本件の非を深く反省悔悟していることなどの有利な諸事情も認められるので、被告人会社を罰金一二〇〇万円に、被告人佐々木を懲役八月にそれぞれ処し、同被告人に対しては刑法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間その刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 反町宏 裁判官 髙麗邦彦 裁判官 平木正洋)

別紙1

修正損益計算書

東海貿易株式会社

自 昭和58年5月1日

至 昭和59年4月30日

〈省略〉

別紙2

ほ脱税額計算書

東海貿易株式会社

自 昭和58年5月1日

至 昭和59年4月30日

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例